京都大学大学院 生命科学研究科 統合生命科学専攻 細胞周期学分野
 & 放射線生物研究センター 放射線ストレス応答研究部門

RESEARCH

低容量ストレスグループ

テロメアの短小化が細胞老化を引き起こす(複製老化)ことはよく知られているが、その後、活性化がん遺伝子Rasの強制発現、細胞生存環境の変化、弱い酸化ストレスなどの非致死性ストレスが短期間に細胞老化表現型を誘導することが多くの研究室によって明らかにされている。我々もこのようなさまざまな細胞老化誘導系において、ストレスMAPK (Mitogen activating protein kinase) p38が重要な役割を果たしていることを報告した[1]。
 さまざまな非致死的ストレスが細胞老化のような重要な表現型を導くことは、弱いストレスに対する生体応答がほとんど明らかにされていないことを考えると重要な知見である。そこで、ストレスグループでは非致死性ストレスがもたらす生命現象を網羅的に明らかにすることを目的として、分裂酵母を用いた遺伝学的スクリーニングを行っている。弱いストレスは引き続き起こる致死性ストレスに対して抵抗性を与えることが広く知られている(獲得耐性)。我々は、これまでに分裂酵母を用いて獲得耐性にクロマチン制御因子が必要であることを明らかにした[2, 3]。今後、このような低ストレス応答経路をさらに明らかにするとともに、それらの経路阻害剤が抗がん剤などの医薬品となる可能性はないのか明らかにするとともに、生物の適応性を維持する上でより根源的な役割を果たしていないか解析する。
 


 引用文献
1. Iwasa, H., J. Han, and F. Ishikawa, Mitogen-activated protein kinase p38 defines the common senescence-signalling pathway. Genes Cells, 2003. 8: 131-144.
2. Tarumoto, Y., J. Kanoh, and F. Ishikawa, Receptor for activated C-kinase (RACK1) homolog Cpc2 facilitates the general amino acid control response through Gcn2 kinase in fission yeast. J Biol Chem, 2013. 288: p19260-19268.
3. Chujo, M., et al., HIRA, a conserved histone chaperone, plays an essential role in low-dose stress response via transcriptional stimulation in fission yeast. J Biol Chem, 2012. 287: 23440-23450.